生まれた!
台風がどんどん近づいているらしい。看護師さんが言うように分娩室ではふたりの妊婦さんが頑張ってる…
台風ありがとう!たまに痛みが遠のき、その時は自然のパワーに感謝する余裕ができる。
台風の日に産んだヒトー??
と調査してみたい。新月の日のヒトー?満月?
午後になり、昨日話した看護師さんが顔を見に来てくれた。
「良かったね。でも、ごはん抜きはキツイでしょ。買ってきてもらえるといいんだけど。ここからが大変だから…」
「??朝ごはん全部食べました」
ラッキーなことに何かの間違えで食事が出ていたのだ…手術の日は禁食のはずが…
色んなラッキーが重なって生まれて来てくれる赤ちゃんに感謝だ。全ての奇跡に感謝感謝。
うーーだめだー痛ーい!
どうしよう。ベッドが空いてないかも。
看護師さんたちも妊婦さん同様にハーハー忙しそう。
さあ立って歩いて! 分娩室へ Let's go!
私の番が来たー!痛みが遠のいたタイミングで、歩く。看護師さんが支えてくれる。でもすぐそこなのに…遠い。なかなか分娩台に辿り着かない。
さあ本番❗️
息みが美味いと褒められた。マタニティスイミングで練習した甲斐があった。
「先生はー??先生呼んできてーー!」
看護師さんの声が聞こえる。
さっきふたりの赤ちゃんを取り上げて、ちょっと休憩だろう…
ヒ ヒ フー
たまに冷静になっては、先生不在が不安になる。
夫が来た。私としてはもうどうでもよいタイミングでの、夫の到着。
ニンニク臭かった。
後から聞いた話。ラーメンと餃子を食べてきたらしい。
先生登場。ハサミ持ってる。これで会陰切開か…意外と病室がよく見える。
ヒ ヒ フー、ここここに力入れて!看護師さんが上手に誘導してくれる。混乱してわからなくなり、
どこー?おしえてー!と叫んだのを覚えている。
ここ、ここ!力入れてー!
ご主人ほら赤ちゃんの頭が見えるわよ。
と看護師さんが足元へ夫を呼んだ。
「だめっー」大きな声で叫んだ。
珍しいものを見物するようなことはやめて欲しい。あくまでも私のフォローをお願い。
と約束してあったのだ!
逆子が治った喜びが共感できない生き物だ。そんな景色をみたって、テレビで見た馬の出産シーンを思い出すか…目の前の血だらけの景色に気を失うか…だろうと私は勝手に思っていた。もちろんこんな事は夫には言っていない。
妊娠をして、私は冷静に性別による違いを考えるようになっていた。とにかくお互い理解しようと努力する。頭では理解できる。でも妊娠に関して、心から共感は無理なこと。そもそも違うのだ。
だから、私も目にできないシーン。赤ちゃんがこの世に出てくるそのシーンを夫が見ることに意味を見出せないのだ。それならば、それは避けた方が賢明だと私は思っていた。
夫は勢いよく立ち上がっていたが、座った。
そして誕生❗️
スカーンと出てきた。同時に「ギャー」大きな声。
元気な女の子!
その後の処置がすごいお腹を押して、押して、中のものを全部出す。原始的なやり方。そして縫って、そして何してもらったのか、もう覚えていない。
お風呂に入って綺麗になった娘が来た。
頭がしずくのような形をしてる。とんがってるのだ!顔も赤白マダラ。眉毛はない。目は閉じている。ぷあーとあくびした。
頭の骨まで、ずらしてとんがらせて、細い産道通ってきたんだ。苦しかっただろう。疲れたろう。
この子は私のためにわざわざキツイ道通って…出てきてくれたんだと、その時、わかった。
ありがとうね。苦労させたね
帝王切開で生まれた息子は何の苦労もなかったのか?そうでもない。お腹の中で座禅組んでたら、突然外に出され、泣くこともできないほどびっくりしていたのだろう。母から、外の世界へおいで…と連絡も無いまま、突然出されてしまった…という感じか!
頭まんまる、目をぱっちり開けて、声も上げず…
私は目の前にいる娘とは全く違った息子の様子を思い出していた。
娘は相当疲れていた、胎盤がボロボロは本当だったと思った。眠ってばかりで目を開けないのだ。
おっぱい飲む時も目を開けない…不思議
看護師さんにこの子、目はありますか?と聞いたくらいだ。
生まれて3日目、看護師さんが部屋に飛び込んできた。
「今 目を開いてるわよ! 早く見にきて!」
ベットでウトウトしていた私は飛び起きた!
やっと会ってもらえる!!!